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ちなみに、【クソ男】だの【優男】だのというのはもちろん彼女達の付けたあだ名だ。
殺し屋等と言う恐ろしい【非日常】な職業を営む彼女達にもそれくらいの【日常】はあるのだ。
そして、アマンダはバルフレアへの矢の装填を終えニヤリと口元を歪めたまま立ち上がり、呟く。
「じょ、かるーく遊んでから退散するよ」
「お……おう」
レヴィリアはそんなアマンダの無駄なまでの行動力に少しばかり引き気味に腰に着けた大型のナイフに手を掛け、腰を落とし、体勢を低くする。
そして彼女達のこれからの運命を決めるカウントダウンが始まる。
「スリー、トゥー、ワン……」
レヴィリアは息を飲む。
百戦錬磨のキャットレディとは言え、二十八人も相手にするのは初めてなのだ。
別に目的は相手の殲滅ではない。
ただ自分を使い捨てにしてくれた組織へのちょっとした報復………気が晴れればそれでいい。
………が、しかし、やはり不安は残る。
「……おい、アマン―――」
「ごーーーっっ!」
レヴィリアがアマンダに「やっぱりこんな事しないでさっさと逃げようぜ」と声を掛けようとした直後、金髪のグラマラスな美女はお気に入りのオモチャを壊して遊ぶ子供のような笑みを浮かべながら酒場の両開きの扉を蹴破り、素早くボウガンの射出口を奥の丸テーブルに座る恰幅の良い男に向ける。
「やっほうボォォス、季節外れのサンタお姉さんからのプレゼントだよぉーう」
そして引き金を引く。
毎秒四発の高速の金属製の矢が甲高い音を奏で、酒場内の【ブルース】所属の人間達の身体を貫いていく。
元々【バルフレア】は【対魔物用】として開発された【兵器】だ。
人間などあっという間に挽き肉になってしまう。
「あっはっはぁー!みぃぃんな死んじまいなあぁぁぁ!」
かなりハイテンションなアマンダ。
その背後には一人の男がナイフを構えて忍び寄るが―――
「ヒステリック馬鹿女!背中ががら空きだっつの!」
レヴィリアがさらにその背後を取り、腰から抜いたナイフで首を掻き切る。
「馬鹿はアンタだよ。んなもんアンタがいるからほかっといたんじゃないか」
「ぁあん?……たく、助けなきゃよかった……」
「ホラホラ!ボサッとしてるとアンタの取り分がなくなるよー!」
「あ!馬鹿!少しは残せっての!」
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