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そこは……今は使われていない四階建ての廃ビルの一室。
男は無様に腰を抜かし、小便を漏らしながらも必死に後退っている。
そんな男の視線の先には一人の女が立っていた。
長く、少しボサボサな黒髪を後ろで束ね、茶色の短パンに黒のタンクトップといった動きやすそうな格好をした彼女の右手には、女性が持つには不釣り合いな大きめのナイフが握られている。
「か、金なら払うっ!だから命だけは………」
どうやら男は命を狙われているらしい。
よくよく注意して見ると、男の回りにはいくつもの死体が転がっている。
恐らくは目の前にいる彼女が殺したのだろう。
その証拠と言ってはなんだが、彼女の長くしなやかな脚や、頬には返り血と思われるものが付着している。
「オイオイ……今更命乞いとか………惨めなのにも限度があるだろ」
彼女は両手を肩くらいの高さに上げ、呆れたように息をつく。
「頼むっっ!私には妻や子供がいるんだ!それにお前には金だけじゃない!地位もやる!だから……っ!」
殺さないでくれ!
………とでも言いたかったのだろう。
しかし、男は鉄甲入りのブーツで顎を蹴り上げられて顎が砕け、舌を噛み千切り、最後まで言葉を発することなく甲高い悲鳴を上げて床をのたうち回る。
「ギャーギャー喚くんじゃねえよ……男なら最後くらい覚悟決めて死ねよ」
「だ…だずべで………」
「あん?助けて?笑えねえ冗談だ……お前は今までに何人殺してきたよ…これはその報いさ。妻と子供がいようが関係ねえ……お前は此処で………デッドエンドだ」
「な"……だずべ………あ"ぁぁ"ぁ"ああぁ"あ"ぁぁ"っ"っ"!!」
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