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数分後、そこには生きている人間はいなかった。
あるのは数体の死体。
そのうちの一つは逃げるように壁に張り付き、額に大きな刺創がある。
そしてその廃ビルの一階。
彼女はそこにいた。
大勢の男に囲まれて………
「オイオイ……なんの真似だこりゃあ……」
彼女の表情は怒りに満ちている。
「今日の仕事も見事だったよ【キャットレディ】。だが、それも今日で終いだ。我々が君を雇っていた事が奴らにバレた」
「奴ら……?【玄武】の連中か?」
【キャットレディ】……彼女の名前だろうか。
しかし、この状況はどう見てもこれからピクニックにでも行こうかというような雰囲気ではない。
「そうだ。【玄武】の幹部連中にバレてしまった」
「………だから火が着く前にアタシを始末しようって腹か?」
「そういう事だ。君には悪いが……此処で死んでもらうよ」
そうして彼女を取り囲む十人近い男達は懐から短剣を取り出し、ゆっくりとその輪を縮めていく。
獲物を逃がさぬよう………確実に仕留めるつもりだ。
しかし、そんな絶対絶命とも言える状況にも関わらず、彼女の表情には焦りの色は見えない。
「………キャットレディ、なんのつもりだ?まさか……助けが来るとでも思っているのか?」
「あん?助け?馬鹿言うんじゃねえよ……なんでアタシが【キャットレディ】だなんて呼ばれてるか……アンタが知らないわけねえよなぁ?」
「―――っ!やれ!殺せ!」
―――笑った。
絶対絶命のこの状況で―――
「ぐあっ!」
「カヒュ………ッ」
男は忘れていた。
彼女は【キャットレディ】
【猫娘】と呼ばれる程の身の軽さ、身体能力を誇る事を……。
「馬鹿っ!そっ―――」
「ヒッ――あっ――カハッ……」
彼女は襲い来る男達を素早くかわして一人目の首に素早くナイフを突き立てると高く跳躍し、二人目の肩に着地、馴れた手付きで首をへし折ると再び跳躍。
慌てふためく二人の背後に着地すると表情を変える事なくナイフで首を掻き切る。
辺りには鮮血が飛び、彼女の美しい顔にもベッタリと付着している。
「これで四人………次はどいつが死にたい?」
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