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男達は目の前で起きたこの異常な光景に息を飲む。
こっちは十人、相手はたった一人の小娘。
なのに……瞬く間に四人が殺られた。
彼らは純粋に恐怖していた。
十人が六人、なら………次は誰が死ぬ?
そして、それがいけなかった。
「ボケっとしてると……何も出来ずに死ぬぜ?」
その声が聞こえた時、新たに二人の鈍い悲鳴と共に鮮血が舞う。
これで残るは四人。
「ヒィ――ッ!うわあぁぁぁっ!」
残る四人の内の一人が恐怖に耐え切れずに叫び声を上げながら短剣を彼女へと向けて振り回す。
しかし、闇雲に振り回すだけの刃が当たるはずもなく、男は額に無様に喚いた後、額にナイフを深々と突き立てられて絶命する。
「後………三人……」
彼女は笑みを浮かべるでもなく、深く沈んだ黒い瞳で残りの三人を睨み付ける。
それは慈悲の欠片もなく、ただ純粋に作業を遂行しようとする冷たい瞳だった。
「ま……待て………もういい……ボスにももうお前を狙わないように言っておく……だから……」
この一団のリーダーと思わしき、最初に彼女と話していた男は後退り、彼女から距離を取ろうとしている。
「ハッ、馬鹿言うんじゃねえよ。お前はアタシを殺しに来たんだろ?なら……死ぬ覚悟だって出来てんだろ?」
ゆっくりと歩を進める彼女の両脇で、力無く膝を着き、顔から床に崩れ落ちていく残りの二人。
その横たわる身体、胸の辺りからは尋常ではない程の血が流れ出している。
彼女の持つ大型のナイフで胸を貫かれたのだ。
そして反対側の男はコメカミに大きな刺創がある。
ともかく、これで残るは一人。
「た……頼む!見逃してくれ!」
男の必死の命乞い。
そんな男の態度に彼女は先程とは全然違う、とても優しそうな笑みを浮かべ―――
「だ・あ・め」
すぐに殺意の篭った表情に切り替え、ナイフを素早く振り抜いた。
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