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「……ったく、今日は厄日だぜ」
今度は場所は変わり、彼女は今殺戮を行った廃ビルの裏にある細い路地で全身に付着した返り血をタオルで拭っている。
流石に全身血塗れの状態で町を歩きたくはない。
(しかし………明日からどうしたもんかな……)
彼女の職業は殺し屋。
しかし、お得意様が彼女を狙い、それを返り討ちにしてしまった。
信用が第一のこの仕事、恐らく明日には噂が広がり、干されてしまうだろう。
さらには今日の一件で彼女も狙われる立場となるだろう。
そうして暫くし、身体を吹き終えた彼女はタオルを後方へと放り投げ、「ま、いいか」と楽観的な声をあげ、路地から一歩踏み出した瞬間―――
「うわっ!」
一本の、二十センチ程の短い金属の矢が彼女の耳を掠めた。
もし、避けていなければ額に命中、即死していた事だろう。
彼女はこの矢には見覚えがある。
それは彼女の商売敵が愛用している連射式のボウガンに使われているものだ。
「オイオイ……こりゃあなんの挨拶だよ……【クイーン】」
「いやぁ、私の所に依頼が着てねぇ~……。【レヴィリア】、アンタを殺してくれってさ!」
【クイーン】
女王と呼ばれた女は肩口までの金髪、中々に大きい胸を白のワイシャツで隠し、黒のタイトミニと言う格好で連射式ボウガン【バルフレア】を構え、【レヴィリア】と呼んだ彼女に向けて引き金を引いた。
ドドドドドと言う激しい連射音が響き、無数の金属の矢がレヴィリアを襲う。
連射速度は一秒あたり四発と、そこまでのものではないのだが、射出口から発射された矢の速度は尋常ではく速い。
レヴィリアでなければあっと言う間に蜂の巣……いや、サボテンになっている事だろう。
「うわっ!わっ!……こんのくそアマ!アタシは今日はもうオフなんだよ!」
「あっはははっ!知ったこっちゃないねぇ~っ!」
「―――んのボケ!そんなんだからテメエにゃ男が寄ってこねえんだよ!」
「んな――っ!それはアンタだって似たようなもんだろうが!」
「アタシはアタシより弱い男に興味がないんだよ!」
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