第一章 悪鬼羅刹の猫娘

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『逃げる』 アマンダのその言葉に信憑性はない。 しかし、このままならば待つ未来は間違いなく【デッドエンド】 立ち向かっても……逃げたとしても先に待つのは確実なる【死】 ならば……… 「………詳しく聞かせな」 とっても楽しそうな逃亡生活ってのも悪くない。 レヴィリアはナイフを離し、腰に着けた鞘に納めると立ち上がり、アマンダに向かって手を伸ばす。 「ケホ………ったく、アンタは気性が激しすぎるんだよ。ほら、血が出てんじゃないか」 アマンダはレヴィリアの手を取って立ち上がり、うっすらと血の滲む首に触れてぶつくさと文句をいい始める。 「うるせえよ。アタシは肩に風穴空けられたんだ。その程度で済んでラッキーだと思えよ」 「私はアンタと違って女を大事にしてるんだよ」 「は、無闇矢鱈にボウガンを撃ちまくる狂人がそれを言うかよ」 「バーカ、私はプライベートでは清楚なレディだから男なんざいくらでも寄ってくるのさ」 「何が清楚だよ。力ずくで男捕まえてるだけじゃねえかよ。ま、んな下らねえ事より、逃げる方法ってのを教えろよ」 レヴィリアが知りたいのはアマンダの男を捕まえるどうでもいいテクニックではなく、どうすれば無事に逃げられるかという事だ。 しかし、アマンダはレヴィリアの問いに対して「ふっふっふ」と勿体振った笑みを浮かべるばかりで中々答えない。 「おい、さっさと答えろよ」 元々短気なレヴィリアは次第にコメカミの辺りをピクピクと動かし、腰のナイフに手を掛ける。 すると、その行動に少し慌てたようにアマンダは胸ポケットから二枚の紙を取り出す。 「これだよ、コ・レ……ってコラ!返せ!」 「ああん?んだこりゃ?二枚とも何かの日付と時間が書いてあるだけじゃねえか。大陸間飛空挺便にでも乗るつもりか?」 「バーカ、んなつまらないのじゃなくて、もっと楽しいモンさ」 アマンダはレヴィリアに奪われた二枚のメモ用紙をさっと奪い返し、さっきと同じ……いや、それよりも黒い笑みを浮かべる。 ちなみにメモの内容は、一枚目が『七日、二十二時』 二枚目には『十九日、十三時』と書かれている。 今日は七日、一枚目に書かれている日だ。
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