第四十三章 最期の戦い

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サラサラと、身体の所々が砂となって散っていく。 ヒビはもう全身の至る所に回り、触れればそれだけで砕け散ってしまいそうな程に。 しかし、それでもガスターに痛みを感じているような素振りはない。 我慢しているのではなく、純粋に痛みを感じていないのだろう。 「親父………」 そうでなくば、ウォレットを見るその眼が、これ程までに優しいものであるはずがない。 「ウォレットよ………最後に一つ、男として……そして父親として貴様に始めて頼もう」 ガシッとウォレットの肩を掴むその手は、肩に触れてすぐに崩れて塵となる。 ガスターの顔も………もう三分の一は砂となって散っている。 それでもなお、ガスターは力強いその眼光でウォレットを真っ直ぐに見抜く。 「テルゼを救え………そして、クラウニールを倒し、再び空に自由を____」 ガスターのその言葉が最後まで紡がれる事はなかった。 最後まで言うよりも早く、世界最大にして最強を誇った伝説の大空族、ガスター・バレルはその生涯を終え、塵となりウォレットの目の前から消えた。 残されたのは目の前にある砂の山、そしてその中にキラリと光るペンダント。 鉄製の、所々錆の着いているそれはロケット式になっていて、開くと中に一枚の写真の切り抜きが入っていた。 「………ったく、こうも素直になれないのは血ってか」 呆れたように肩を竦め、細い血染めの鎖を己の首に掛け、ペンダントを己の胸に仕舞い込んだ。 これで敵の最高幹部であるガスターを撃破した。 残るは大トリ、クラウニールのみ。 ……なのだが、今此処でそれを手放しで喜ん喜ぶ者はいなかった。 父親を……自らの手に掛けたのだ。 きっと、ウォレットとて顔を見られたくないだろうと、皆は気を配っている。 「いよし、これで残るはクラウニールだけだ。皆、覚悟はいいか?」 しかし、ウォレットは何事もなかったかのように剣を鞘に収め、クルリと振り返るとパイプを咥え、マッチで火を灯した。 「……そうね。後はクラウニールだけね。それで、この戦いも終わりだわ」 その隣に立つのはサーシャ。 ポン、と肩を叩き、一足先にと吹っ飛んだ壁の穴から甲板へと飛び降りる。 「あ!サーシャさん待って!私も!」 「こら!私を置いていくんじゃないよ!」 「ふふん。私は飛べるから余裕」 そうして残ったウォレットとレヴィリア。
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