第四十三章 最期の戦い

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まるで御伽噺の世界だ。 悪い魔法使いにより猫にされた少女は、王子様のキスにより元の姿へ戻る事が出来ました。 ………と、そんなメルヘンな出来事を目の前で見ていたウォレットも、張本人のレヴィリアも、ただニヤリと笑うだけ。 世界そのものとなろうとするクラウニールに刃向かうのだ。 つまりは逆賊、悪党。 そんな二人にメルヘンなど似合わない。 「身体の調子はどうだい?」 「あぁ………なんか……猫ん時より強くなったような気がしてたまんねえよ」 鉄鋼入りのグローブを着けた手の平を何度か開閉し、少しピョンピョンと飛び跳ねて己の身体の感触を確かめる。 調子はすこぶる良い。 猫の獣人だった頃と比べても、身体が軽く感じる。 「今ならサーシャも楽に倒せそうな気もするぜ」 ニヤリと笑みを浮かべながらそう言葉を発するレヴィリア。 その言葉に嘘はない。 ウォレットも感じているのだ。 レヴィリアの全身から感じる、本物の強者にのみ持つ事を許された【凄味】を。 今のレヴィリアから感じる王者の風格。 もしかしたら………今の彼女ならばヴォルフォリアの女神すらも打ち破れるのではないかとも思えてしまう。 「ま、とにかくよ。今は先に進もうぜウォレット。お前の親父さんの墓はこの船………世界最強にして最大の空族の母艦って事でいいだろ?」 「………そうだな。心底愛した空で散ったんだ。ガスターも………親父も本望だろうしな」 そうしてウォレットは己の胸、ペンダントに拳を当てて目を閉じる。 僅か数秒の黙祷の後、先に飛び出したレヴィリアを追い掛けて甲板はと飛び降りた。 肌けたワイシャツの中、キラリと光を反射するペンダント、ロケットの蓋は空いており、そこからは小さな二人の子供と、嬉しそうに微笑む二人の両親………若き頃のガスターとウォレット、メアリーとニックの写真が覗いていた。 「………で、どうしたのヤオ?」 「イや………なンカそコの浮遊石にコイツが引っ掛カってたカらな。姉御の知り合イだと思って連れてキた」 そうしてプリンセスマザー甲板。 炎に包まれ、凄まじい熱気の中で先にシルフ号へと到着したサーシャ達。 シルフ号はかなり無理に不時着した為、もう飛べないかと思っていたが、知識猫達の活躍により、なんとか後一回はフライトが出来そうな程にまでは復活していた。
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