第四十三章 最期の戦い

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その頑張りを褒めろとばかりにサーシャに群がる知識猫達を放っておき、エミは今、奇面族の長のヤオと会談の真っ最中。 そして暇なフィリはクアルとエキドナと並んでこの紅く染まった空を見上げている。 この世界から少しでも戦争を無くす為、戦争の種を摘み取る為に動いていたのに、結局はこうして戦争の中心人物の一人となっている。 これはなんの茶番なんだろうと、フィリは己のやって来た事を、己の力の無さを自嘲する。 既にこの戦争………勝負は着いている。 フリーディアとシリウスの活躍により、敵側の戦力はほぼ壊滅。 残存兵力も空戦になれた空族連合により駆逐され、既にこの空域にて生き残っている者の八割は空族連合側の人間だ。 後は主役がラスボスを倒すだけの、王道展開になりつつある。 そんな時、フィリはふとエミの方に目を向けた。 「ヤオ………どうしたのその子?」 「すグそコの浮遊石に引っ掛カってたのを見つケたんだ。姉御………食うカ?」 ヤオが摘むようにして持っているのは一匹のピクシー。 見た目からしてまだ幼い小妖精の少女。 エミはその少女に見覚えがあった。 それはテルゼの肩によくとまっていた……サーシャと友達の_______________ 「ポーラちゃん!?」 「姉御っ!?」 と、そこまで思ったところでサーシャがエミの頭を勢いよく押し退け、シルフ号のハッチ、角にぶつける。 相当痛かったのだろう、何やら切ない悲鳴をあげて蹲るエミを置いておき、サーシャはヤオの手からピクシーの少女を奪いとり、己の手の平の上に乗せた。 その少女は四枚の透明な羽を持ち、幼い顔立ちをしている。 「ポーラちゃん?ポーラちゃん!?」 サーシャはそんな少女の名を叫んだ。 少女の名は【ポーラ】 テルゼの相棒にしてサーシャの親友だ。 しかし、ポーラは気を失っているようで反応はない。 指でそっと揺すってみても反応はない。 「ポーラちゃん、ゴブゴ爺の栗金団よ。食べる?」 「くりきんとー!?ゴブゴじいの!?たべるんだお!!」 起きた。 食欲に唆られて起きる様はフィリを彷彿とさせるが、ポーラは起きた途端にサーシャの顔を見てすぐに何かを思い出したかのように、わかりやすく焦りの表情を浮かべた。 「サーシャお姉さん!おねがいなんだお!テルゼお姉さんを………テルゼお姉さんをたすけてほしいんだお!」
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