第四十三章 最期の戦い

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同時刻、西の大陸東海岸より数十キロ沖合い上空。 「で、フローラさん。目的地まで後どれくらいですか?」 「後は………ロイさん、どれくらいでしたっけ?」 「えぇ~………さっきも教えたよねフローラさん。このスピードなら後三時間もあれば塔に着くって」 「あはは……なんかこういう乗り物ってよくわからないので………と、言うことですレイさん」 「そうですか。ありがとうございますロイ」 「レイさん!?教えたのは私ですよ!?」 「そのフローラさんに教えたのはロイですよね?」 ぐぬぬ、と悔しそうな顔を浮かべながらフローラはロイに眼で助けを求める。 しかし、ロイは手の平を上に、肩の高さまで上げ、呆れたように首を横に振る。 「しかし、飛空艇なんて久し振りに乗ったよ。大陸間の移動なんて空飛べば一発だしね」 そして、椅子に座りロイは目の前のテーブルに広げられた空路図に目視線を落とす。 彼らはヴァルフォリア王族専用艇にて現在、ヴァルフォリア国から遥かな海と空を越えて西の大陸の聖地、【天空への塔】へと向かっている。 三百人は収容出来るであろう大型飛空艇に、ヴァルフォリア航空騎士団専属の乗組員四十と、フローラとレイとロイ。 彼らは戦争に参加する為に空を駆けているのではない。 「でも………いいんですかフローラさん。フィリさん怒りません?」 「え?何でです?」 「だって、あの無駄なプライドの塊のフィリさんですよ?」 「私達が介入する事を嫌がるかも………ですか?」 「ズバリです」 「大丈夫ですよ。私達は戦闘をしに行くわけではないんですから。私達はあくまで戦いで疲れたであろうフィリさんを迎えに行く過保護な団体なんですから」 「それでも、フィリさんが怒ったらどうするんですか?」 「その時は………ま、ちょっとお灸を据えましょうかね」 ニッコリと、世界一とも揶揄される美貌でフローラは微笑みながら地味に怖い事を口走る。 無駄にプライドが高いフィリは人の助けを極端に嫌う。 それが己の欠点だとはわかっているのだが、人を助けたいと思う気持ちが強過ぎるからか、フィリは基本人を頼らない。 ウォレット達との旅で少しは改善されてはいるが、それでも根本の性格までは変わらない。 フローラ、レイ、ロイの三人は同時に、静かに紅茶のカップに口をつけた。
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