第四十三章 最期の戦い

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そんな事をフローラ口走った少し後、世界の空の覇権を賭けた戦場。 最終決戦地である塔の正面。 ウォレットはどうやって塔へと突入しようか悩んでいた。 最後の塔からの脱出を考えれば、プリンセスマザーに激突し、ボロボロのこのシルフ号を塔に体当たりさせるわけにはいかない。 そんな事をすれば、間違いなくシルフ号は大破、死ぬ。 故にフィリに魔法で塔の壁に穴でも空けてもらおうかと思っていたのだが、そんな事をするよりも早く、塔の中腹、石造りの壁が機械的に動いた。 まるで誘っているかのように、両扉がゆっくりと開くかのように口を開いた。 これは罠なのか、それともクラウニールも早く決着を付けたいだけなのか………。 「んな悠長に悩んでる暇があったら突っ込もうぜ。今はチマチマ悩んだって始まらねえ。やるなら………デカい花火が如く派手に行こうぜ」 そんな時、レヴィリアがウォレットの肩をポンと叩き、その背中を押した。 確かにレヴィリアの言う通りだ。 残す敵はクラウニールのみ。 ならばさっさと倒し、また平和な空族生活に戻ろうと、ウォレットは舵を切る。 さっきまで砲撃の音が、人の悲鳴が、魔物の断末魔で騒がしかったこのこの空も、今はもう血と硝煙の匂いを残して静かになっている。 戦争は終わった。 空族連合の勝利、スタンシア空軍の壊滅………との事で、戦いは終わった。 しかし戦争には勝てども、クラウニールを倒されねば本当の勝利は得られない。 そして、それが可能なのはウォレット空族団のみ。 生き残った船団は戦艦バハムートと、戦艦クトゥグアを中央にシルフ号の背後に展開している。 そしてその二つの戦艦のデッキの上に立つ、それぞれの船の船長【シリウス】と【フリーディア】 「ウォレットォォオオオッ!わかってんだろうな!?俺に勝った貴様が、貴様らが負ける事は許されんのだと!」 「ウォレット!これは元はお前の戦いだ!だから俺達はこれ以上の戦いはしない!」 だから、後はお前が勝って、そして戻って来い! 二人の歴戦の覇者は、同時に、声を揃えてそう叫ぶ。 その後に、その二人の言葉に呼応し、他の船団からも雄叫びが聞こえてくる。 「せんちょ、応えなくていいの?」 「……そうだな。だからエミ、よろしく」 「えぇー………流石にこれは船長の仕事でしょ?」 「エミ、よろしく」 「えぇー………」
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