第四十三章 最期の戦い

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「ま、あれだけの事をして来たんだ………報われねえと可哀想だわな」 そう言い、レヴィリアは数々のエミの努力を思い返す。 フィリの起こす騒動に巻き込まれ、レヴィリアとアマンダに騙され、サーシャの修行に付き合わされ、ウォレットと爆弾開発を共にし、エキドナに様々な学問を教わり、クアルに舐め回され、興奮したフリーディアに追いかけ回され、シリウスに埋められ、ララに全身オイルマッサージ施され、ニックに毎晩襲われ、それでも毎晩寝る前に己の道具の手入れを忘れない。 努力と言うより、ただの不幸な気もするが、それでも確かにエミの経験値は溜まっている。 「だろ?エミは………いずれこの空を統べる大空族になる。その為の下積みをしっかりとさせてやるのも………船長たる俺の役目だしな」 羽根ペンを無造作に指でクルクルと器用に回しながら、エミへの期待を口にする。 「エミは俺を………いや、俺だけじゃない。フリーディア、ララ、シリウス………テルゼをも超える器さ」 流石にされは過大評価だ………とはレヴィリアは言えなかった。 エミには才能がある。 戦闘の才能ではない。 あるのは何よりも大切な【生きる才能】。 「全く、いい拾いもんしたな」 「あぁ………全くさ」 そうして二人は楽しげに笑う。 楽しげに笑い、何かを忘れていた。 「………で、そろそろ私を気にかけようよ」 それはフィリの存在。 呼んだのに、スッカリ忘れていた。 フィリはずっと、部屋の入り口で話が終わり、己に気が向くのを待っていたのだが、拉致があかずに声をかけたのだ。 「で、どうせウォレットの治療でしょ?」 「ああ、頼む」 「ん、じゃあ服脱いで」 膨れっ面でウォレットの前のテーブルに腰掛け、服を脱いだウォレットの正面から、治癒の魔法で傷を癒していく。 「フィリ、時間は?」 「十分くらい」 「んじゃ、アタシはその間に適当に腹ごなしでもしてくるよ」 そうしてレヴィリアは船長室兼操舵室から退室。 残されたのはフィリとウォレット、そして実は最初からいた操縦担当の知識猫。 「………ねぇウォレット?」 「………どうした?」 「私って………弱いのかな?」 「………どう答えて欲しいんだ?」 「思ったままの事……聞きたい」 「思ったまま………か、難しいな」 「………うん。でも……聞きたいの」
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