第四十三章 最期の戦い

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ウォレットの胸の傷に手を当て、淡い光を放ち治療を続けるフィリ。 が真に治療して欲しいのは彼女の心。 確かに火力で言えばフィリはこの一味の中では最強だが、こころは恐らく最弱。 脆い心を守る為、普段から強がってはいるものの、根はやはり真面目で大人しい部類に入るのだろうか、とても臆病だ。 まだ幼い頃はそうでもなかった。 いつからこんなに臆病になったのだろう………。 思い付くのはリリンとの融合。 六年前、死した二人の魂が融合し、復活したあの日。 フィリはあの日からずっと劣等感に苛まれてきた。 本当に【天才】としか言いようのないリリンにずっと憧れてきた。 しかし、いくら努力を重ねようともリリンには追い付けない。 それが彼女に強いコンプレックスとして根付いてしまっている。 この一年に渡る旅でも、活躍したのはリリンばかり。 フィリは自信を失っていた。 「そうだな………君は……最初、俺達が出会った頃と比べると弱くなったのかもしれないな」 そしてウォレットは思い返す。 出会った頃のフィリには正直勝てる気がしなかった。 しかし、今は違う。 ウォレット自身が強くなったのも少しはあるのかもしれないが、今はフィリには負ける気がしない。 この旅を通して、君は弱くなった。 ウォレットは正直に、偽りなくそう告げた。 フィリとてその言葉は覚悟していただろう。 自覚していたのだから。 ………が、やはり面と向かって言われると辛い所はある。 ズーンと落ち込みながらも治療の手は止めず、そうして胸を治療を終えた頃………。 「でもな、フィリちゃん。俺は今のフィリちゃんの方が、人間としてかなり魅力的で、強く見えるよ」 「でも………私、弱いんでしょ?」 「そうだ。弱くて、気高くて………強い」 「………意味がわからない」 「わからせてやろうか?」 ウォレットはそっとフィリの頭を引き寄せ、そのフィリの淡い桜色の唇に______ 「………オイオイ」 迫ろうとしたのだが、フィリは首を横に振って回避。 故にウォレットはフィリの頬に口付けをする形となった。 「ウォレット、だめ。それはだめ」 「駄目と言われたら尚更欲しくなるもんだしぜ」 「………せめて戦いが終わってから。戦いが終わったら一回だけデートくらいしてあげるから」 「セックスは有りか?」 「無し」
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