第四十三章 最期の戦い

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「ヤる事ヤらないデートなんてガキのお遊戯だぜ?」 「じゃあ、治療やめる?今なら傷口に塩を塗り込むサービスも付けるよ」 「わかったよ。俺の負けだ負け」 ヒラヒラと両手を挙げ、全面降伏の意を示す。 フィリもそれに気を良くしたのか、今度は背中を向けろと指示を出し、背中に着いた切創の治療を始める。 ただ黙々と、言葉を交わす事もなくフィリはウォレットの背中に治癒の魔法を掛け、ウォレットはただただ目を閉じて受け入れている。 別に特別な事も何もない。 だが、二人はそうして二人でいるだけで絵になった。 他から見れば、どうしてこの二人はくっつかないのかと疑問に思う程なのだが、この二人は互いを強く理解し、尊敬し、信頼している。 その信頼は愛ではない。 二人は友情で固く結ばれている。 他から見れば愛と遜色のない程の固い友情だ。 が、本人達は理解している。 コイツと所帯を持ったら人生破綻する。 ………と。 方や女たらしと、方や感情の起伏の激しいテロリストだ。 血を見る前に友情で留めておくのが吉だろう。 やがて、ウォレットの治療が終わり、フィリの額から鼻の横を通り、汗が一滴床に落ちた。 「サンキュー、お礼にキスでも如何かな?」 「いつか生まれて来るアルジーに会えなくなってもいいのなら」 「そりゃ困る。じゃあ………お触りくらいで留めとこうかな」 「だから触るな馬鹿!」 いつの間にか、フィリの中にあった不安、悩みは消えていた。 「ってなわけで、最後の戦いだ。準備はいいか?」 「もちろん。私はいつだって万全よ」 「私も大丈夫!バッチシだよ船長」 「なぁレヴィリア、だから人間に戻った時の流れを聞かせろっての。王子様のキスで魔法が解けたとかじゃねえの?」 「ばっか、ンなんじゃねえっつの」 「……アマンダ、【読心術】……使おうか?」 「フィリよ、そんなの使わんでも猫娘の顔を見れば一目瞭然じゃろうて」 「クアァァ……」 全員、準備は万端のようだ。 「んじゃ、突入するぜ」 そうしてウォレットは待機していた知識猫達に号令を掛け、シルフ号は動き出す。 数々の仲間達の声援を受け、真っ直ぐに最後の敵の待つ天空への塔へと。 「……ウォレット」 「ん、どうしたフィリちゃん」 「一応………ありがと」 「……ふ、どういたしまして」
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