教授と呼ばれる大バカ野朗

15/42
前へ
/83ページ
次へ
母の死因は心停止 死体は道端に倒れ込んでいたそうだ 葬式、火葬などの手続きは中学生にして親を亡くした僕に近所の人、母の友人など顔も知らない人が協力してくれた 無事、母の葬儀と火葬が終了した そして今日は僕を交えた会合が開かれる その会合では今後、僕をどうするかの話し合いがなされている 僕が知ってる身内は母だけだった おじいちゃんおばあちゃんの事を聞くと話をはぐらかされて、話がちゃんと進まなかった 父の話を聞くと母は悲しそうな幸せそうな顔をしていた 僕はその時顔を見ると無性に悲しくなったので一度しか聞けなくなった だが母は父に関してこうも言っていた 「あの人はどんな時もあなたを見てる…そして、あなたが危機に瀕したとき、必ず、助けてくれるわ…」 僕にはこの言葉の意味はわらなかったが、しっかりと覚えていた だが、僕は父の事を知らない、つまり僕の引き取り手はいなかった そして、今日の会合では引き取り手のいない僕を養子に欲しがった人達の集まりだ しかし僕は母との思い出の全てがある住み慣れた家を出る気は全くない しかし、僕がそんなことを言っても誰も聞くことはない それは、僕が数日前まで完全に放心状態だったのが原因だ 母が亡くなり僕はろくに食事もとらなくなった それは、母を亡くした僕の精一杯の抵抗だったんだと思う 僕の虚ろな瞳は目の前の空間を見つめ、手を引かれれば抵抗はなく、ただ従った そんな状態がしばらく続いたとき、僕を現実に戻してくれたのは、図書委員の彼女だった 彼女は医者でさえもお手上げの僕の手を引き、向かったのは図書室 彼女は僕をいつもの場所、窓側一番奥の席に座らせた 彼女は僕を席に座らせると、僕の目の前に大量の本を積み重ねた 彼女は僕の目の前の席に座り「幸せな話100選!!」を読んでいた 僕は目の前に積まれた本の山を見た 規則正しく背表紙が全てこちらに向いている 本の山に目をやり、目に入ってきた本の題名に僕は驚愕した 本の全ては僕が母との最高の思いでであるクイズのために読んだ本、しかもお気に入りのものばかりだった なぜ彼女がこの本のことを知っているのか… そんな疑問も浮かんだが、そんな事を考えている余裕はなかった 僕の頭には母との思い出が走馬灯のように浮かんできた おいしい料理 満面の笑み クイズ 全てが僕の頭を駆けめぐった
/83ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加