教授と呼ばれる大バカ野朗

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僕の母は女手一つで僕を育ててくれた 仕事と家事、子育てをも両立させたまさしく親の鏡とも取れる人だった そんな母も流石は僕の親だ知識欲がすさまじかった 母の最高においしい晩御飯を食べながら僕が今日、学校の図書室で知った事を母に話す それを楽しそうに嬉しそうに聞く母 母にとっては知識欲の対象は僕の話す知識ではなく、息子である僕が今日、どんな知識を手に入れてきたのかが知りたかったのかもしれないが、それでも僕は楽しかった 極めつけは、母の質問、いや、クイズだった 母は僕が話した今日得た知識についての質問を必ず行った だけど不思議な事に、今日知ったのは歴史の事なのに、質問は必ず歴史以外の分野になっている 例えば、僕が 「“関が原の戦い”って実は織田信長の軍勢の方が圧倒的に人数が多くてその数500万人!でも、その為の移動手段である馬や馬車が不足していたんだってさ」 すると母はこう聞いてきた 「じゃあ、馬車には20名、馬には2名として、いったいどれだけの数の馬車と馬が必要になるかしらねぇ~?ああ!そうそう馬車と馬の差は限りなく0に近づけてみてね~」 こういった具合だ ニコニコしながらこんな事を問いかけてくる 今なら分かるが、こんなの、高校生になってからやる内容だ 中学生の僕が聞いてスグに分かるわけがない それを知ってか知らずか分からないが、そう言った後食器を下げて自室に戻ってしまった 後日僕は数学の本を片っ端らから読み漁った そして答えを見つける過程でまた新しい事を知り、母の宿題をクリアした そして晩御飯の時に答えを報告する 母はニッコリしながら「へぇ~そうだったんだぁ~」と笑って言う とてもそう言ってるようには見えないほどの屈託のない笑顔でそう言う母は続けてこうも言った 「じゃあ、その計算方法を導き出した人って、どんな人?」 こうして、永遠と母のクイズは続いていった、時には数学、時には国語、更には帝王学なんてのもあった そんなお陰で、僕は毎回毎回目標がある中で本に向き合えた そんな時間はとても充実していた 母が仕事で一人で晩御飯を食べた日は当然母のクイズはなかった その次の日の図書室はとても無駄で空虚な時間になった 僕はどれだけ母に支えられているかを痛いほど感じた
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