第一話

3/24
前へ
/24ページ
次へ
「一恵! アンタ、いったい何考えてるんだよ! ずーっと 連絡こないし、しても留守電ばっか!!」 怒ってる怒ってる。 おばあちゃんは ご近所のおばあちゃん仲間と お茶をするらしく 行ってしまった。 一恵とは私のお姉ちゃんで 今は26歳。 大学入学をきに 上京してしまった。 今は有名雑誌の企画部で 働いていると聞いた。 私は怒鳴り散らすお母さんの背を 見ながら壁に寄りかかり見守る。 「…………はあぁぁぁッ!? そんな事 無理に決まってるでしょ!!!」 物凄い声を荒げるお母さん。 お姉ちゃんは昔から やんちゃでよく、お母さんを 鬼にしていた。 まだ、やんちゃさは健在なんだね。 私が少し 微笑ましい気持ちでいたら 急にお母さんが私をギンッと睨んだ。 えー… とばっちりはやめて… 「……無理だよ!! こんなのんびりした子が やってけるわけないだろぅ!!」 あれ、なんか 私の事を言われてる気がする… お母さんはその後も 電話に向かって怒鳴っていたけど 不意にため息を吐くと 私に受話器を渡し 疲れた顔をしながら フラフラと行ってしまった。 私は首を傾げ 受話器を耳にあてた。 「………お姉ちゃん?」 『ハズキ!?久しぶりぃ!』 お姉ちゃんの元気そうな声に ホッとする。 「どうしたんですか? お母さんすごい怒ってました。」 『相変わらず敬語なんだねぇ! お母さんは大丈夫大丈夫! いつも怒鳴ってナンボな人だから!』 ケラケラと笑うお姉ちゃん。 お姉ちゃんの明るさは大好きだ。 『ハズキ明日、暇?』 「……そうですね 宿題も終わりましたし 暇と言えば暇です。」 私がそう返すと お姉ちゃんは"やった!"と喜んだ。 『明日 こっちに引っ越しておいでよ!』 ・・・・・・・・・・・・ お姉さま? お姉ちゃんの突然の発言に 思考回路がうまく働かない私の脳。 "明日、暇?"と聞いて "引っ越しておいで"と言う軽さは お姉ちゃん以外にできようか。 …………できない。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!

13人が本棚に入れています
本棚に追加