接触Ⅰ ―オレンジ―

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「あんたの噂は聞いてるけど、まさかここまでとはね」 「罪悪感とかないわけ? つくづく最低な女だね」 「勘違いすんなよ。皆あんたの顔が好きなだけで、あんた自身なんて誰も好いてねーから」 そんなこと、言われるまでもなく分かっている。 理解している。 それが、男が好きそうな顔立ちに生まれた宿命。 皆が見ているのは表面上の器。 梨磨を除いて、誰一人として中身を見てくれる者はいない。 「十分それで、私は悦に浸っていますよ?」 理解者は一人いればモウマンタイ、そのようなニュアンスを含ませて言ったのだが女達は顔を顰めてまんまの意味として受け止めたみたいで。 かと言ってわざわざ訂正するまでもない。誤解する奴は好きなだけ誤解すれば良いんだ。 「はぁ!? 何こいつー! マジムカツクんですけど!」 「ねぇヤバくない? このままじゃあの人達もこの女に喰われるんじゃないの」 「大丈夫だって。遠矢さん達は他の男とは違うんだから。こんな尻軽になびくわけないでしょ」 「確かに。てか彼等が一人の女にデレデレ鼻伸ばすとか想像つかないよね」 と、女達は絶世の美女を他所に内輪で何やらコソコソ話し出した。コソコソと言うのには語弊があるが。なんせ、バッチシこころの耳にも入ってきているのだから。 あの人達……? 遠矢さん……? こころの頭上にはいくつものクエッションマークが浮かんでいた。 自身についての噂には敏感なくせして、そうでないことに関しては酷く鈍感。周りの人間に興味がないから。 そうなるとこころは相当なコミュニケーション不足となるが、それは範囲外に分類される者に対して。 梨磨を始め、自分の身内にはそれなりの接し方。 会ったこともない、話したこともない、普段は視界にすら入れない赤の他人に関心を持つのがこころには理解出来ないのだ。
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