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「人の男を取っても、何も感じないんだ」
「ええ、まあ」
感じるも何も、取った覚えがないのだから何かを思うわけがない。
勝手に男が群がり、勝手に女がヒステリーを起こすのなんて毎度のこと。
「とんだ阿婆擦れだね」
――その顔でそんな言葉を吐かないで欲しい。しかも笑顔で。ミスマッチなのよ。
顔と言葉が見事に一致しない様にこころはそう思ったが、その類の言葉自体は言われ慣れているため平常心を保てた。
いくら外見が優れていようと、やはり男と言う枠組みにいることには変わらない。
何を期待していたのか、愚かしい己自身に渇を入れたくなった。
そう言えば、と男のネクタイに注視する。
色はあの女達と同じで赤。
と言うことは、こころにとっては先輩でも、あの女達にとっては同学年と言うことになる。
なのに彼女等はこの男にペコペコと――
何、この男はそんなに偉いのか。王様なのか。見た目だけは王子様だが。
「それなら、俺も相手してくれない?」
更に一歩前に出て、男はこころの耳元でそう囁いた。
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