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男の言葉が何を意味しているかなんて直ぐに分かった。つまりは、そう言うこと。
――こんなに人畜無害そうなのに、勿体ないなぁ。
放っておいても手に余る程に女が寄ってきそうな外見。さっきの女達だってこの男のご機嫌取りに必死ではあったものの、頬を染めつつもあったわけで。
だけど、星の数ほどいる女の中でも私だけはやはり見方が違うんだとこころは思う。
丸くて黒目がちな瞳は少女マンガのヒロインのようで、ふっくらとした潤んだ唇は吸い付くように魅力が溢れていて。筋の通った小さな鼻すらもこころの顔立ちの良さを引き立てている。
全てにおいて愛らしく演出されてある容姿に周囲が何も思わないはずもなく、また、この男も例外ではないと知る。
加えて遊び人と言うレッテルを貼られては、こうも食いつきたくなるだろう。
決してこころが自惚れているわけでも、驕っているわけでもない。これは今までの経験上、事実なのである。
周りが、こころにそのような認識を持たせたのだ。
こころはクスリと笑って、男の頬に手を添えて。
「どう、したいですか?」
仕返しと言わんばかりに顔を互いの唇スレスレのところまで近付けた。大抵の男はこれだけで自分に欲情する。自分を執拗に求めてくる。
しかし、男は顔色一つ変えることなくただ真っ直ぐにこころを見つめていた。
なんら不思議なことではない。
これだけ顔が良いんだ。この手のことはよくあるのかもしれない。
その涼しげな顔を、動揺させてあげようか。
そうこころは妖艶に口元を緩ませた。
だが……
「……っ!」
パシンと渇いた音。
男に触れていた方の手を弾かれたと理解するのに、数分は費やした。
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