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「ねぇ、こころってば!」
だいぶ校舎から離れたところで、こころは歩を止めた。そのか細い小さな背中に、梨磨は声をぶつける。
どうして、そのような意味合いを含めて。
「もう、やめて……こんなこと」
「こんなことって?」
「だからっ自虐行為よ!」
――自虐?
こころはそんなつもりはない。どちらかと言えば、これは防衛策。
どうせ否定しても信じてもらえないのだから、ならばそれを逆手に取れば良い。
もう、傷付きたくはない。
と言うよりは、こころは疲れたのだ。
否定、し続けることに。
自分を見てもらおうと努力することに。
結局は、たくさんの人が自分から離れていった。
それなら始めから、周りを作らない。
そう言う人間だと最初から周囲に示しておけば、自分とて騙されない。
割り切った関係として、見ることが出来る。
「梨磨」
「……っ、」
「貴女がいれば、私は笑える」
これからも、傍にいて。
そう笑って、こころは梨磨の手首ではなく手の平を握り直す。
それを見て、改めて梨磨は思った。
こころを守れるのは自分しかいない、と。
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