接触Ⅱ ―危険な奴等―

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その大きな瞳は暗く、どこか淀んでいる。 「なぁ、(そう)はどう思う?」 「どうって……好きにすれば。俺には関係ないことだから」 「だよねー。先に狙ってたんだったら悪いかなって」 「やめてくんない? あんな女、胸糞悪いんだよ」 「そ、そっか悪い」 ‘みっくん’と愛称込めて呼ばれた男は思わずそう謝ってしまう程に、彼の冷え切った眼に怯んだ。 その瞳は憎悪の塊だった。 この男、オレンジ改め湊は、極度の人間嫌い。 それはここにいる者達の間では周知の事実となっている。 だが、赤の他人にここまで感情を持ったことなんてあっただろうか。 自分が何か気に触るようなことを言ってしまったのかもしれないと、それで男は納得した。 湊について考えるだけ無駄だ。 なんせ知れば知る程謎が深まるような、そう簡単に相手に手の内を見せないような男なのだから。 ――――そして、『彼等』の存在はこの三人だけではない。 紫煙を吐き出して、フェンスに凭れ掛かる男が隣にいる男に問う。 「(はる)も、ああ言うの嫌いだよな」 「あ? 蜜夜の遊びについてか?」 「違う。そっちじゃない。例の女」 「……好きではねえな」 嫌い、とキッパリ口に出来ないのには訳があった。そんな彼を知ってか知らずか男は続け。 「俺、その女視界に入れたら殴りたくなるかも」 殺気駄々漏れでそう呟いた。 これまた理不尽な、と思うだろうが致し方のないこと。 彼は死ぬ程女と言う生き物が嫌いなのだ。 それはもう、手に掛けたくなるぐらいには。 そして、尻軽な女は特に―― 「せいぜい視界に入れないことだな」 友人が犯罪者となるのはご免だ、そう意味を込めて一方の男は言葉を紡いだ。  
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