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「あいつあれで女苦手なとこあるんだよ」
「……俄かには信じがたい事実ね」
現に梨磨にあれだけのトークを繰り出しているじゃないの、そのような意味を含めてこころは和樹を見れば。
「まあトラウマって奴? でも水城さんは大丈夫そうみたいだね」
「そう……」
「あいつはイイ奴だよ。偏見とか凄い嫌ってるし」
「…………」
こころの仲に渦巻くモヤ。
疑心暗鬼。
――だから? 冬雅と親しくしてくれって?
良い人を装って、友人をさり気無く勧めてる?
もはや勝手に脳がそっちの方向へと持っていこうとするのだ。
行き過ぎれば被害妄想にもなり得ることだろうと、警戒せずにはいられない。
しておいて損はないのだから。
にっこり悩殺に笑って見せる和樹に、こころは笑顔の仮面を貼り付けた。
これは彼女なりの自己防衛策なのだ。
*****
「もうほんっと鬱陶しい! あいつ授業中も構わず話しかけてくんのよ!?」
「それはそれはまあなんと言うか……お疲れ様」
「ほんとよ! ったく……」
ちなみにだが、冬雅は和樹が連れて教室を出て行った。購買でお昼ご飯を買ってくるのをこころは耳にしていた。
4時間目が終わるなり、あの二人が出て行くのを梨磨が一瞥した直後こころの元まで来てはさっきのような不満を口にする。
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