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桜並木を抜けると、公園へ辿り着く。
舞い散る桜が瞳に映し出されて、薄いピンク色に染まってた。
満開に咲いているそこで、見つけた。
のどかな雰囲気が漂う中で人目を引きつける、ベンチに座る自分と同い年ぐらいの少女。
ひらり、ひらりと優雅に舞い落ちるそれがまるで少女によって起こされた現象と言っても過言ではないほどに、少女の周りを彩っていた。
足音に反応して顔を上げたその瞬間、自分の中の時間が停止した。
それは、ピンク色の海のようなこの景色よりも魅せられる容姿をしているからと言う理由ではなくて、少女の瞳から不純なものなんて一切入っていないような透明な液体が流れていたから。
さっと顔を隠して俯く少女の頭に乗った桜の花弁を取ってあげる。
此方を見上げてもその瞳には何も映し出されていない。男が見たいのはそんな悲しみの色に染まった顔ではないんだ。
例え幾人が裏切り、敵になろうと自分だけは味方でいられる自信がある。
生まれて初めて中身のある人間に出会えたあの瞬間をきっと忘れはしないだろう。
花開くような綺麗な笑顔をもう一度見れるのなら、残りの人生全てを捧げてもいいと言える。
そうしてきっと、価値あるものになると思うから。
どうか、この桜のように
――――――――さきみちて
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