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幅の広いくっきりとした二重目は、長い睫毛に縁取られる。
ふっくらとした、押したら戻ってきそうな唇。
粉雪のように白くてキメの細かな肌。
筋の通った小さな鼻梁。
155cmと小柄ながらも、すらりと長い手足。
あくなく整いすぎた一度見たら忘れられない顔立ちは、人々を魅了する。
けれど、それが少女――若葉こころにとっては悩みの種でしかなかった。
*****
--コンコン
部屋のドアがノックされ、妙齢の女性が姿を覗かせる。
もうこんな時間かと、ふと現実に引き戻された。
こころは急いで近辺にばらつかせた小物類をポーチにしまって学生鞄に入れた。
「こころー、梨磨ちゃんきてるわよ」
「はーい、今行くー」
玄関方面から聞きなれた母親の声を耳にし、返事をする。
部屋を出る際に全身映し出される鏡を再度見て、風貌をチェック。
赤茶色に染まった、肩より長めのウェーブがかった髪。
濃く描いた通常の倍は大きく見せるラインに、ふふっと思わずこころは弓形にその中身を細める。その笑みはどこか歪んでいた。
うん、と一人頷いては
いかにも、
遊び人って感じ?
そう自虐気味に鏡の前に映る自分自身に嘲笑を送った。
これでいいと納得する。
そう……これで。
「お待たせ、梨磨」
ドアを開け、塀に凭れているこころの唯一の親友に声を掛けたのだった。
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