接触Ⅰ ―オレンジ―

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 前髪をセンターで分け、キャラメルブラウン色に根本から染まったその髪は腰まで伸びる。枝毛一つないよく手入れされたストレートヘア。  吊り上がり気味の目は、それがデフォルトとでも言うように勝ち気に溢れてる。  164cmはある、一見モデルのようなスレンダーなスタイルの持ち主だが女性を象徴とする二つのそれはしっかり発展している。  そんな彼女の名前は水城梨磨。  小学4年の夏休み明けに、彼女はこころの通う学校に転校してきた。それからはずっと、今の今まで彼女はこころの親友でかつナイトとして一緒にいてくれた。  梨磨は名前の通り女だ。  女が女を守るだなんてたかが知れている、気休めにもならないと、話を聞くだけではそう一蹴するのも無理はないが、彼女を普通枠に入れては痛い目見ることになるだろう。  こころは見た目通り非力で簡単に力で捩じ伏せられることだろう。  しかして、梨磨は格闘技を心得ている。オーソドックスに空手、しかもか黒帯まで取得している。ほどよくついた筋肉がついたふくらはぎと二の腕が立証してくれてる。  僅か一年で身に付けたステータス。口にしてしまえば簡単だがそれは並みの事ではない。  女だと舐めてかかれば泣きを見るのはそっち。完膚なきまでにプライドごとへし折られてしまうこと必須。  彼女はこころだけの騎士。  強迫概念とはまた違った、義務的要素を持ってして前に立つ。  「守らなければいけない」と、「守らなくちゃ」は似ているようで真逆の意。  こころは自分のせいで無茶をたくさんするそんな親友に日々頭痛を強いる思いだった。 「おはよう、梨磨」 「……はよ」  欠伸を噛み締めながらもそう返す梨磨にこころは笑みを口元に乗せる。 (私が私でいられるのは梨磨の前だけだ)  彼女がこころの世界。  後はもう、切り捨ててしまおう。  互いが互いを絶対的な存在だと認めている。 *****  常崎高校。  そこが今日からこころ達が通う高校。  名前さえ記入すれば誰もが受かると言われている、校風が荒れてるところ。  関東内で五本の指にカウントされるほどの悪名高きヤンキー育成校。  別段、こころと梨磨は頭が悪いと言うわけではない。  両者共に偏差値60は超えている、寧ろ良い方なのではないだろうか。     
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