接触Ⅰ ―オレンジ―

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 既に成長期が終わっているのか、一年で数ミリ伸びれば上々。  ミリ単位だと靴下でどうとでも誤魔化せてしまえる数値な上、一日の間に1㎝前後の変化があると前にそのような情報をどこかで拾ったために結局のところ無に等しい。  梨磨の後姿にそのような思いを寄せていたところで、体が傾いた。 「ねぇ」  グイッと後ろから腕を引っ張られ、強引に振り向かせられる。  こころの前に、似たような格好をした3人の女達。  同じ髪型に同じメイクに同じようにアクセサリーじゃらじゃら。団子さん兄弟か。  ネクタイの色は赤と言うことは先輩であることは確かなようだ。  この学校はネクタイの色によって学年が判別される。  一年は青、二年は赤、三年は緑。  ここに入る前に読んだ資料にそう記されていたのをこころは覚えていた。  つまり、この人達は二年と言うことになる。 「ちょっときて」  真ん中にいる女が一歩前に出て、そう言った。こころと同じでパーマがかった髪。長さも胸元あたりと、背格好では大差なかろうと無数の視線を集めているのはやはり赤茶の少女。  化粧の濃さなら女の方が更に上をいくのだが、どうしたってこころは人の目を惹いてしまう。カリスマ性、そう言えば聞こえは良いが単純に他者から見てズバ抜けて容姿が派手なだけ。  スッピンでもその眩さは衰えないと言うのに、こうも厚く化粧を上乗せする訳。  ――隠しているんだ。  嘘も、本当も、何もかも全てを包むようにして、全てを覆う。  こころは何も言わず、黙って女達の後に続くことにした。私に何の用、なんて聞くまでもない。あまりにも愚問だ。  今から楽しくお喋りタイム、なんてことはない。この後の展開は見えている。  こころに予知能力が備わっているわけではなく、単純な話、この手の呼び出しは慣れている。  女子トイレ、体育館倉庫裏、裏庭、取り合えずは人気のない場所を選ぶことだろう。  彼女達とて大人数目の前にしては遠慮願いたいだろうから。  こころはぼんやりと梨磨のことを考えていた。 (私がいないことに気付いたら、焦るだろうな。私のことよりもそちらの方が嫌だ。私なんかのせいであの子の心が揺れることさえおこがましいと言うのに。また迷惑かけちゃう)  
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