友情Ⅶ ―温かい雨―

6/21
3211人が本棚に入れています
本棚に追加
/2039ページ
 その日、こころは陽に嘘をついた。  【風邪をひいたので学校休みます】  自分のレパートリーのなさに渇いた笑みが零れる。  事の始まりは昨夜。  一件の留守電だった。  たまたまお風呂に入っていたこころが部屋に戻った時に、確認した携帯に着信記録が残ってた。  それも、ただの不在着信ではなく留守電つきの。  『こころちん、俺、逸未。明日のこころちんの時間を俺にちょうだい。本当に俺、こころちんのことが大好きなんだ。もうこれ以上ないってぐらい好き。でも、いい加減潮時かなって思ってさ。その前にもう一度だけ、俺とデートして欲しい。そしたらちゃんと諦める。諦められる気がするんだ。9時に×××駅前の駐車場で待ってる。何時でも、待ってるから。プッ──もう一度録音をお聞きになる時は────』  音声が機械に切り替わりこころは通話を切った。  こころは折り返し着信履歴の頭にきている名前を出して通話を試みるも、繋がることはなかった。  行くか。行かないか。  その二択しか、残されていない。  『そいつの扱い方改めた方がいいんじゃねぇの。めんどくせぇことになっても知らねぇぞ』  陽の忠告が脳裏を過る。  ────────何時でも、待ってるから  そして、何度もリピートされる言葉尻に付け足されたそれ。  こころは逸未のことだって、“友達”としてなら好きだ。  ただ、同じ気持ちを返してやれないだけ。  無下にあしらうのはまた違う気がする。  蜜夜だって分かってくれたんだ。  逸未だって────……  こころは瞳を伏せて翌日のことを思いながら眠りについた。  
/2039ページ

最初のコメントを投稿しよう!