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「立ちなさい。そんな所に座られては戦い辛いわ」
「あ、はい」
急に言われ俺は無意識に反応する。
すると、先程までの足のすくみは嘘の様に立ち上がる事が出来た。
立ち上がったのは良いが、まだライガーが4匹。
先程は油断していたが、流石にライガー達は警戒してしまっている。
すぐに襲って来る気配は無いが、確実に襲える機会を狙っている。
「大丈夫ですか?」
剣を構える鎧姿の女に声をかける。
彼女はライガーを見据えたまま言う。
「大丈夫よ。このレイピアに賭けてね」
やはり、あれはレイピアらしい。
それにしても、4匹のライガーを前にしても怯まない姿は、とても頼もしい。
「さて、行きますか」
そう呟いた彼女は、ダンスのステップを踏む様に前に斬撃を繰り出し1匹仕留める。
体を捻り右のライガーを横一文字に切り裂き、また仕留める。
続けてレイピアを上へ投げたと思ったら左手に持ち替え、突き仕留め、最後に指揮棒でも持っているかの様に手首を捻りライガーを斬った。
まさに舞の様な戦い方だった。
気が付くと俺は拍手を送っていた。
「凄いね。その戦い方すごく格好良いよ」
彼女はピシャリとレイピアに着いた血を振り払い、レイピアを納めると言った。
「ありがとう。貴方ぐらいの物よ。この戦い方を褒めてくれるのは。他の人は剣に相応しくないとか貧弱とか言って認めてくれないの」
彼女は、やれやれと言った風に肩をすくめる。
「え、貧弱そうには、とても見えないし、とっても良いと思うんだけどな」
本心だった。逆に、けなす方がどうかしてる。
「ありがとう。はぁ、何で城の傭兵達は、こんな風に紳士的じゃないのかしら。ところで貴方」
勢い良く指を指され少しドキッとする。
「何ですか?」
「何ですかじゃないわよ。ろくに装備しないでこんな所をうろついてどうかしてるの?」
表情が兜に隠れ見えないため、怒っているかどうか分からないが、どうやら俺は怒られているみたいだ。
「すみません」
悪いのはシンなんだけどな、と思いながらも謝る。
呆れたのか、ため息をつくと「まぁ、分かれば良いわ」と言う彼女。
「所で貴方ここ辺りで落下物を見なかったかしら、私はそれが何だったのか確かめる為に来たのだけれど」
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