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確かめる為に来た?
何故なのか。
自分が空から降ってきたと知れば彼女は俺に何をするのだろうか?
これは予想以上にヤバい状況なのかも知れない。
彼女は何者なのか……。
鎧に身を包む所を見ると、鎧は遠距離での移動に向かないので、旅人では、ないだろう。
あくまで推測だが。
何より現在、彼女は剣以外の何一つ荷物がない。
つまり、近くに安全な場所、食料を確保してあるか、確保出来る場所があるのだろう。
何にしても情報が少ない。
とりあえず、
相手は警戒心を余り持たずフレンドリーに話してくる所を見ると腕に余程の自信があるか、平和ボケしてるかの、どちらかだろう。
身元を明かさず、相手の警戒心を完全解くのが最善策。
「知らないです」
とりあえず、落下物については、知らないふり。
「知らないですって?おかしいわね?」
疑問形で話かけてくる。疑惑をかけられているのだろうか。
「何がおかしいんですか?」
冷静に行こう。冷静に。
何せ相手は武器を持ってる。
俺は相手の気に触れれば、先程のライガーの様になってしまうのでは、ないかと考えただけで身震いをしてしまいそうになる。
「あんなに、大きな音が聞こえたんだもの。気付かない筈ないわ」
きっぱりと言い切る彼女。
それ程の音が出ていたのだろうか?
俺は、痛みで音なんて聞こえもしなかったしな……。
これはシラをきれないぞ。
なら彼女には申し訳ないが……嘘をつくまでだ。
「分からないんですよ。落下物のことも、自分が何者かも……。」
出来るだけ悲しそうな顔をして言ってみせる。
「なっ貴方、記憶喪失!?」
彼女は驚いた様に言う。
あ、ちょろい。
彼女は案外純真なんだね。
そして、いい人なのかも知れない。
「はい、気が付いたら草原にいて……もう、何がなんだか……」
とりあえず、自分の都合の良い状況になるようにしなければ。
「それは、辛かったわね」
兜の合間から涙を浮かべる彼女の瞳が見える。
純真にも程があるでしょう。
「あ、別に辛くは無いです。何と言うか知り合いが居ない知らない場所にいきなり来た感じでしょうか?」
とりあえず、泣かしたみたいで気まずいので適当な言葉を選び自分は悲しんでいないとアピールする。
「あぁ、そうだね。貴方には記憶が無いから、そういう風に感じてしまう物なのね。記憶喪失の人ってそんな物なのかしら?」
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