旅立ちは一人

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俺が知ったことでは、ない。 「さぁ、どうなんでしょうね。私にも分かりません。そんな事より教えて下さい。貴女は誰でココはどこですか?」 とにかく、情報が欲しい。 「良いわ。答えてあげる。まず私は兵士をやってる者でソフィリアと言う名前。ここは、ガリルフル草原」 丁寧に教えてくれる所をみると敵意は無いらしい。 「ガリルフル草原……?」 知らない地名だ。 当たり前だけれども。 「そう。ガリルフル草原。大陸中央部に位置する世界一大きな草原よ。」 彼女はしゃがむと腰に潜めていたナイフを取り出しライガーの肉をさばいてゆく。 「この大陸はなんて言う名前ですか?」 今後どう対応するにも、まず場所を知らねば。 彼女は目を見開きいった。 「本当に何も分からないのね貴方」 「はい。言葉は話せるようですけど知識がどの程度あるのかは全く分かりません」 重ね重ね嘘はつきたくないものだ。 良心が痛むというよりは、嘘がバレそうで怖い。 「なら、貴方には聞きたいことがあるし近くに街があるからいらっしゃい。どうせ宛もないのでしょう?」 おぉ、街が近くにあるのか。 これは有難い。 飯が食えて職にありつけられたらなお良し! 「はい、よろしくお願いします。」 上手くいくかは分からないが 何にせよ現状のままでは死んでしまう。 何がなんでも今は生きることを優先しなければ。 「じゃあ、決まりね!」 そう言うと彼女はライガーのさばいた肉などを持ち立ち上がった。 「肉を持っていくのですか?」 彼女は何のことかと一瞬戸惑うがライガーの肉のことだと分かり答えた。 「あぁ、これ?全ては持っていかないわ。持ちきれないもの。でも、回収班に頼んで骨とか全部持って帰るのが普通ね。 ライガーの肉は食料に革は防具や服に骨は家具から武器まで様々な物に使えるから。」 命を最後まで使い切る正しい人間の姿を久々に見た気がする。 もったいない精神は異世界にもあるのか。 「あれ?それなら全部回収班に任せて肉も置いて行けば良いのに、口ぶりからして街は遠くないんですよね?」 ふと、頭に浮かんだ疑問をぶつけてみた。 「何を言っているの貴方。回収班が到着するまでに他の肉食動物に食べられてしまうに決まってるでしょ!」 あぁ、なんだ。 俺は馬鹿か! 日本に住んでたからかどうも平和ボケしていていかん。 ハイエナみたいなのがウヨウヨいることを忘れてはならない。
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