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呆気のないものだった。
俺は自分が死ぬの所は見られたくなかった。
だからといってあんな死に方は無いだろうと我ながら思う。
今、俺は虚空にいた。
白い空間なのか黒い空間なのかさえ分からない。
死んだら何も残らないと言うのは本当だったのだろうか?
それが本当なら記憶も残るはずは無いだろう。
もしかして、まだ生きていて、ここは夢の中なのだろうか?
自分は本当に存在しているのだろうか?
自分と言う存在そのものが薄れていくのを感じる。
「お主は死んだ」
唐突に声がする。
それは老人の声だった。
だが、老人にしては張りのあるよく通る声。
気がつくと、そこには白い髭をはやし白い服をまとっている人物がいた。
神様だろうか?
そんな疑問が頭をよぎる。
白髭の老人は口を開く。
「いかにも儂はお前達が神と呼ぶソレと言っても間違いではない」
いつからそこ居たんだ?
「ずっと居たと言っても答えられるが今も居ないとも答えられる」
どういう事だ?
「何、簡単な事じゃ空気みたいなものと考えてくれればよい」
確かに空気なら感じる事は出来ないし確かに存在するがそれを無いと判断する事も出来る。
つまり、どこにでも居ると言うことか。
「お主は中々と聡明な様じゃな。良かろう、お主には生死の選択肢をやろう」
どうゆう事だ?
「ふむ、お主に一から説明する必要がある。お主が儂が『お主は死んだ』と告げた時、何も言ってこない所を見るとお主は自分が死んだと言うことを理解しておるな?」
あぁ、理解している。
俺は死んだ。
ただ、いつものように大学に行って疲れて帰ってきて自宅でご飯を食べ風呂に入って友達と長電話をして寝た。
何も代わり映えのない日常。だが、そこで俺は死んだ。
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