旅立ちは一人

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風、冷たい風。 風を切る音が聞こえる。 唸りを上げる風が自分を包んでいる事に気付く。 俺、落ちてるのか? 目を開けると薄い雲とその下に森と草原が広がっているのが見えた。 よくテレビとかで見るスカイダイビングの映像と似ている。 肉食動物が草食動物を追いかけている。 また、俺は死ぬのか? せっかく生きかえったのにな。 せめて最後の言葉でも考えようか。 俺は空中で考え、手を広げ頭から落ちて行く。 皆ありがとうとか? ありきたり過ぎるか……。 体が寒い。 地上まで後何メートル程かなと確認しようと再び地面を見ようとすると、もうそこに地面があった。 「あっ」 また呆気ない終わりだったなと思う俺。 頭から背中、腰、尻、太もも、ふくらはぎ、足と言う順番で地面にたたき付けられる。 俺は言葉にならない叫び声を上げた。 全身を炎が包んでいるの様な痛み。 体全身を丸くさせ痛みをこらえる。 夢ではなく現実なのだと思い知らされる。 体全身が痺れる。 額にじんわりと汗が滲む。 もがく。 もがく。 この痛みは何だ? とてつもなく痛い、熱い、苦しい。 痛いが消えない。 なぜ、消えない。 なぜ痛い? なぜ、死んでない? もがくこと数分。 痛みは消えていた。 ゆっくりと立ち上がると、そこは膝丈ほどの草が広がる草原だった。 風か遠くから吹き耳元をすり抜ける。 かいた汗も消えていた。 何故、俺は死ななかったのだろう。 雲の上から落ちて死なない訳があるだろうか。 神様との会話は本当だったのだろうか。 これは、やっぱり夢なのだろうか。 でも、さっきの痛みは何だったと説明出来るのか? 『現実じゃよ』 確かに聞こえるシンの声、先程と違い頭が冴えているので夢では、ないだろう。 あの空間での話は嘘では無くココは本当にウェークファイなのかも知れない。 『そうじゃ、ここはウェークファイ。儂が世界に干渉すると影響を与えてしまう。手短に話そう。儂は、お主に力は与えておらぬ。しかし、一つだけ能力を与えた。どんな言語でも読み書きや話が出来る能力じゃ。頭の中の言葉が勝手に変換され任意でも変更可能じゃ。後は、その大陸の住人と上手く話してやり繰りしておくれ。儂は見ておるからの。じゃあの』 早口で話しだしたと思ったら言葉を挟む隙も与えず話を一方的に終わらすシン。 何がじゃあのだよ。
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