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俺は落ちてくる途中で見た物を思い出した。
草食動物の群れと群れを追っていた肉食動物の事だ。
やばい。
草食動物の群れがこっちに向かってくる。
つまり、後ろには肉食動物もいる。
肉食動物が襲ってきたならば、ひとたまりも無い。
肉食動物がどうにか出来たとしても、その前に草食動物の群れに巻き込まれては、無傷ではいられないないだろう。
逃げなくては。
逃げ切れるのか?
分からない。
俺は走りだす。
足を一歩踏み出し足に力を込める。
すると足に思いの他、力が入ったのか周りを巡る突風。
20m程一瞬で周りが移動していた。
俺のどこにそんな力があったのかは、分からないが、これなら逃げれる。
確信した俺は一歩踏み出すだけで20mを進むその現状を喜びながら、徐々にスピードを上げ走り出す。
テンポ良く足を前へ前へ踏み出す。
草食動物の群れからはグングンと離れて行く。
ふと、後ろを振り返る。
きっと、もう大丈夫だろうと思った瞬間。
足元が疎かになり足を草に縺(もつ)れさせ、頭から転がる様にこけてしまう。
起き上がる頃には、草食動物の群れは、無かった。
代わりに唸る肉食動物。
虎とライオンを合わせたような肉食獣がいた。
よだれが滴る肉食動物は1匹だけでなく、4~5匹。
足の草は解けたが、周りを囲まれ今にも飛びかかって来そうな険悪な雰囲気。
もう逃げられない。
肉食動物の鋭い視線が突き刺さる。
ここで死んだら生き返れない。
辺りに何か無いか探すが、武器になりそうな物は何もない。
そろりそろりと、間合いを狭めてくる肉食動物達。
久しぶりの飯だと言わんばかりの滴るよだれ。
足を食われる覚悟で逃げれば何とかなるかも知れない。
後ろからガサリと音がする。
しまった出遅れた。
喰われる!
足がすくんで言うことを聞かない。
「畜生!こんな時にヘタれてる場合かよ!」
肉食動物が飛びかかり牙が俺の肩に食い込もうとした瞬間だった。
俺は目を閉じた。
痛みが無かった。
「何やってんのよ!旅人ならライガーぐらい簡単に対処するか、テリトリーを避さけて旅しなさいよ!」
目を開けると肉食動物は縦に二つに裂けて目の前に転がっていた。
そして、その脇にはレイピアの様な細い剣を持つ鎧姿の女。
鎧を纏(まと)う彼女は、肉食動物つまり、ライガーと呼ばれる物を一瞬にして縦に切り裂いたのだ。
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