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―――――――
「娘さんは、タイヤの下敷きにされ、即死でした……」
「あぁ……有里弥、そんな、いやああぁぁあぁああぁあ!!」
「有里弥……っ」
耳に聞こえてくるのは、死亡の宣告と、有里弥のお母さんの嗚咽混じりの悲鳴。そして、その肩を抱く有里弥のお父さんの、押し殺したような声。
脳裏に焼き付いた有里弥の最後が延々とリピートされる。人間としての形を失った、最愛の親友の姿が。
もう何度も吐いた。吐く物が無くなっても、胃を締め付ける気持ち悪さは取れない。
ガタガタと、身体の震えが止まらない。私が話すことに夢中になって、信号を見ていなかったせいで。誰よりも優しい彼女は、私をかばって……死んだ。
最後に、今までで一番の笑顔を見せながら。
自分が死ぬという時に、彼女は恐らく、私の心配をしていたのだ。そう確信できる程に、強く優しかった。いつだって自分のことよりも、友達を大事にしていた。
有里弥のお母さんの悲鳴が、その側にいるお父さんの涙が、怖い。
ごめんなさい。ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい。
でも、どれだけ謝っても、有里弥はもう戻って来ないのだ。死んでしまったら、もう何も残らない。
「全然、お礼言えなかった」
たくさん彼女に助けてもらった。その分を返すことが出来なかった。私が有里弥を、助けてあげることも出来なかった。
悲しみと罪の意識と、恐怖と感謝と後悔。そして、人生で三度目の絶望。
私はこれから、
どうしたらいいの……?
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