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熱い口づけだった。それと共に、体内に彼女の血が流し込まれた。鉄の味と果実のような甘味が口内に広がり、何とも言えない幸福感が体を支配する。
遠くから聞こえてくる金属の交わる音と、悲痛な叫び、そして咆哮。致命傷負ってもなお、戦いをやめることはない。それなのに--
「お前に力をあげる」
唇を離され、朦朧とする意識の中そう告げられた。
「だから逃げて」
皆が戦う中、自分だけが逃げろと言うのか。ましてや、
「……貴女を……朱姫を残して、俺だけ……逃げろと?」
「お前は生きて。生きて私を助けて。それまで私は生きるから」
赤い髪、赤い衣を風に靡かせ、赤い瞳でキッと睨まれる。まるで炎を体現したかのような少女、否、尊き姫君。だからこそ、命を賭してでも護らねばならないというのに。致命傷を負った自分を助け、さらには逃げろという。
「俺は……!!」
再び口が塞がれ、そして、また〝何か〟が流し込まれる。刹那、ソレに対する拒絶反応。
全身が痺れ、感覚をなくす。けれど、鋭い痛みが全身を駆け巡る。小さく呻き、身を捩り、意識が覚醒する。
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