序 章

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 夕方から降り始めた霧雨が、雨足を強め出した午後8時過ぎ。  カラフルに咲いた傘の華の中、肩を寄せ合う恋人達。  間を縫うように家路へと歩みを速める、濡れそぼったサラリーマン。 各々が無関心を装い抜くこともできずに、ある者は控えめに囃し立て、また、ある者はあからさまに眉をひそめる。  視線の先には、縺れ合う一組の男女―― ――あぁーっ!女にヤられるなんて、俺すっげぇダセーんじゃね? 気っ色悪い絡み見せられて、皆ひいてるし。 バチ、あたっちまったかなぁ。 オネーサン、怒るだろうなあ……――― 「ちょっと、あなた達!大丈夫?!」  神様なんて信じない。  それでも、願わずにはいられなかった。  もう少し。あともう少しだけ。  何かを掴み、本当に手に入れるまで。  ――違う。本当は怖いだけなんだ……
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