22人が本棚に入れています
本棚に追加
夕方から降り始めた霧雨が、雨足を強め出した午後8時過ぎ。
カラフルに咲いた傘の華の中、肩を寄せ合う恋人達。
間を縫うように家路へと歩みを速める、濡れそぼったサラリーマン。
各々が無関心を装い抜くこともできずに、ある者は控えめに囃し立て、また、ある者はあからさまに眉をひそめる。
視線の先には、縺れ合う一組の男女――
――あぁーっ!女にヤられるなんて、俺すっげぇダセーんじゃね?
気っ色悪い絡み見せられて、皆ひいてるし。
バチ、あたっちまったかなぁ。
オネーサン、怒るだろうなあ……―――
「ちょっと、あなた達!大丈夫?!」
神様なんて信じない。
それでも、願わずにはいられなかった。
もう少し。あともう少しだけ。
何かを掴み、本当に手に入れるまで。
――違う。本当は怖いだけなんだ……
最初のコメントを投稿しよう!