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「しゃーねぇな…。ちょっと待てよ。」
悠哉は、溜め息混じりにそう言うと、鞄の中をあさくりはじめた。
「ちょっと、電車来ちゃうよ!」
「乗れないなら意味ねぇじゃんよ!」
駅の方を確かめながら悠哉に言ったが、決して鞄をあさくるのを止めようとしない。
「あった!」
遂に何か探し物が見つかったらしく、それを取り出した。
それは、金色の笛で、悠哉は自慢気にわたしの前に突き出した。
「ねぇ、笛っていうのはわかったけど、一体何をするつもり?笛持ってたって学校には行けないわ。」
わたしが呆れた声で言うと、悠哉は、小さく頷いた。
「まぁね。でも、これをこう吹くと…?」
それだけ言って、笛を口にあてた悠哉は綺麗な音を奏でた。
ただ吹いて音を出しただけなのに、それは音楽のように心に響いた。
…しかし、何も起きない。
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