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「お、おい!泣くなよ…。」
少年は、慌てて自分のポケットからハンカチを取り出すと、それでわたしの涙を優しく拭いてくれた。
「…ありがとう。」
「ま、いいってことよ。」
わたしが、声を振り絞って言うと、少年は、照れたように頭をガシガシと掻きながら言った。
わたしは、そんな少年の姿が可笑しくて、今までの恐怖を忘れ、クスリ、と笑ってしまった。
しかし、わたしは、恐怖が消えたのと同時に、あることを思い出した。
「帰らなきゃ!」
わたしは、そう言ってから、腕時計を確かめる。
しかし、これまた奇妙なことに、電車の到着時間はとうに過ぎてしまっていた。
わたしが、首を傾げていると、少年が、何かを思い出したように、小さく声を漏らした。
「あんたさ、これからも気をつけた方がいいぜ。あいつ等、一度見た奴のことは、絶対に忘れない。お前を殺そうと、追いかけて来るかもな。」
真剣な眼差しでそう言うと、少年は、何故か手を差し伸べてきた。
「…何?」
わたしが、不思議に思って首を傾げると、少年は、再び頭をガシガシと掻きながら、更に此方に手を差し伸べる。
「いや、危ないからさ、取りあえずうちのアジトに着なよ。あんたの身の安全をボスに頼んでみるからさ。」
ボス…?
この少年は、何かのグループにでも入っているのかな?
わたしが、疑問と不安で迷っているのに気がついたのか、少年は、大丈夫、安全だから。それに、どうせ、電車ないんだろ?と言う。
わたしは、少年の言葉に、少し驚きはしたが、今は一人で居たくなかったので、少年の手を取った。
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