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「お前どんだけ俺が好きなんだよ。お前の熱意に俺は泣きそうだよ」
とりあえず、コータには落ち着いてもらおう。
いくらなんでも声がでか過ぎた。
七組八組の教室から何人かが顔を出してしまっているじゃないか。
これじゃあ、厄介な事になりかねない。
そう、例えば、今一番バレたくない人物に、俺が今ここに来ていることがバレるとか。
「大吉……くん?何してるの?」
ほら来た、毎度お馴染みの残念なくじ運。
コータの大声に何があったのかと教室から顔を覗かせた人達の中に、他でもない、吉野小牧のやたら整った顔があった。
「よ、吉野さん。これはその、何でもないんだ。たまたまここを通りかかって、その……」
咄嗟に上手い言い訳も思いつかず、俺が言葉を詰まらせていると、吉野小牧はキッと目つきを鋭くして、教室からこちらへ歩み寄った。
「何をしてるの?はなしなさいよ」
“話しなさいよ”。
そう言われたと思い込み、俺は必死に言い訳の言葉を探した。
しかし、違った。
吉野小牧が話しかけたのは、俺ではなく、俺の胸ぐらを掴んだまま何が起こったのか把握できずアホ面を浮かべているコータの方だった。
「あ、いや、違うんだこれは。こいつとはダチで、ちょっとふざけてただけなんだ。悪いね、馬鹿みたいに騒いで」
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