ある意味運命的な恋

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とりあえず場を収めようと、俺はコータの手を退けながら、なるべく穏やかな声で言った。 久しぶりにそんな話し方をしたもんだから上手くやれたか不安だったが、吉野小牧は視線を俺に移すなり急に穏やかな目つきに戻ったので、多分これでよかったんだろう。 「そ、そうだったんだ。私の方こそごめんね。早とちりしちゃった」 両手を胸の前で組み、首を僅かに傾げ、舌をちょこんと出してそんなことを言われては、「いいよいいよ、気にしないで」という言葉が出てこない男がこの世にいるだろうか。 少なくとも俺は出てしまった。 「ね、大吉くん。せっかく来てくれたんだから、ちょっとお話しようよ?まだ昼休みも結構あるし」 仕草がいちいち可愛いな。 流石魔性の女。 今までの男共はこれにコロッとやられてきたわけか。 だが、俺は割と硬派だと自負している。 隣で友人がニヤニヤしながら肘で小突いてきたりしていなければ、俺は決して頬を染めて頷いたりなんかしないんだからな。 「あ、ああ。いいよ」 コータが俺のことを思って行けと言うんだ。だから行くだけのことだ。 浮ついた気持ちなんてない。決してない。 「やった!それじゃ、ここでっていうのも何だから、自販機でも行こうよ。歩きながら話そう」 「はい、喜んで」 それにしても、ぐいぐい来るな、この子。 これなら、ついその気になってしまっても仕方ないかもしれない。 「頑張れよー、大吉ー」 無言で小さく、コータにだけ見えるようにサムズアップで返事をし、俺は慣れない歩調で吉野小牧の隣を歩き出した。
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