ある意味運命的な恋

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  吉野小牧から突然の告白を受けたのが、木曜日。 コータと共に八組まで赴きその後吉野小牧と二人きりで自販機デートをしたのが、翌日の金曜日。 であるからして、その更に翌日である今日が土曜日となるのは必然だ。 そして、稼ぎ時である土曜の昼過ぎ、俺の母親が経営している喫茶店に俺が駆り出せるのもまた、必然なのだろう。 「おーい、大吉ー。コーヒー早く持って来てくれよー」 「今持ってくっつーの。忙しいんだから、常連なら空気読んで大人しく待ってろよ」 俺の母親、神戸幸子が祖母から継いだ喫茶店、【ドギーハウス】は、ペット同伴OKの所謂ドッグカフェというやつで、犬を遊ばせたり交流させるスペース――ドッグランにそれなりの広さをとっているため、飲食をする店内は四人掛けテーブルが四つにカウンター席が六人分ある程度の小さな店である。 客は専ら常連ばかりだが、毎日昼時には近所の犬好きの主婦達が集う場となっているらしく、休日もこの通りそこそこの賑わいを見せていることからして、経営はそれほど危うくもないらしい。 「はい、お待たせいたしましたー」 「おい、大吉。その態度は何だ。俺は客だぞ?笑顔を見せんか笑顔を」 別にやりたくてやってるわけじゃない俺の接客にちょくちょくケチをつけてくるこの鬱陶しい中年男性客の名は、吉野光一。 ドギーハウス創設当初からの常連客にして、母さんの高校時代の友人で、母子家庭で育った俺が小さい時には父親のように慕っていたこともあった人物だ。 実は今もそう思っていることは、本人にも母さんにも秘密だが。
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