初めて引いた当たりくじ

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俺は、よく貧乏くじを引く方だと思う。 ゴミ捨てを誰が行くか決めるじゃんけんでは、負けなかったことはない。 ファミレスのドリンクバーで悪ふざけして作ったタバスコ入りミックスジュースを飲むのも、大抵俺だ。 ロシアンルーレットたこ焼きを食べようって時には、わさびなんて入ってなかったっていう演技をするのにもだいぶ慣れた。 物心ついた時には親は片方しかいなくて、どうせなら金持ってそうな父親の方に引き取られたかった、なんて冗談を言えるくらいには、高校二年生になった俺はこの貧乏くじ体質に折り合いをつけて生きていけるようになっていた。 そうして、大きな期待なんかせず、どうせならこの世にあるハズレくじは全部俺が引いて他の人には幸せになってもらおう、なんてくだらない綺麗事を密かに胸に秘めて生きている俺の前に、突然幸運の女神ってやつが舞い降りた。 「神戸大吉くん……だよね?」 いかにも、その通りだ。 「私、二年八組の吉野小牧って言います」 八組ってことは、校舎が違うのか。 道理で、こんなに美人なのに見覚えがないわけだ。 「私、神戸くんのことが好きなんです。私と付き合ってください!」 うん?今、何て言った?
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