ある意味運命的な恋

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それを知ったのは、中学二年の時。 母さんからは、俺の父親は既に家庭を持っていた人で、所謂不倫という行為の果てに、俺は産まれたと聞いていた。 その父親は結構なやり手の実業家で、俺の養育費だけを払い、今は海外に住んでいるとかなんとか。 中学二年のある日、体を悪くし、入院生活を続けていた祖母の世話に俺一人で行った時、真実を聞かされた。 店によく顔を出し、俺のことを自分の息子のように可愛がってくれていた吉野光一という男こそが、俺の父親なんだと。 母さんが言っていたことは嘘だったのだと。 俺が“愛人の子”として産まれたということ以外は。 それを聞いた時、俺は裏切られた気がして、あまりにショックで、詳しいことを聞く余裕もなく、病室を飛び出し、丸一日部屋に閉じ籠った。 そして、やはり詳しいことを祖母に聞こうと部屋を出た時には、もう遅かった。 それから二度と、祖母と口をきくことは叶わなかった。 祖母が亡くなったショックと、真実を知ったショックが重なり、思春期真っ只中だった俺が立ち直るのにそこそこ時間を費やしたのも無理のないことだと思う。 そして、時間をかけて立ち直り、俺は決めた。 俺が真実を知っていることは秘密にしておこうと。 多分、母さんはいつか、俺に話してくれると思うから。
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