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十五歳になった時も、高校生になった時も話してはくれなかったから、十八歳になった時か、もしかしたら二十歳になった時かもしれない。
いつまででも待って、母さんの方から、俺がそれを知っても大丈夫なんだと思われるようになってから、聞かせてもらいたい。
だから俺は、実の父親を前にしても、何一つ変わらず、“知り合いのおっさん”として接することに努めた。
けれど最近、どうしても気になることが一つある。
「実は今日、娘とここで待ち合わせをしてるんだ。だから、飯はそん時に頼む」
そう、光一さんには、俺と同い年の娘がいるらしい。
つまり、俺にとっての異母兄弟が、この世にいるってことになる。
誕生日までは知らないから、姉なのか妹なのかは分からないが。
「へぇ、やっと連れて来てくれる気になったんだ。あ、だからわざわざテーブル席陣取ってるのね」
「そゆこと。なんか昨日、どうしても行きたいから連れて行けとか言い出してな。でも午前中は部活があるから、ここで待ち合わせだってよ。よく分からんよな、年頃の娘ってのは」
「娘さんも犬好きなんでしょ?初めて来るところって、一人じゃ入り辛いものなのよ」
「そんなもんかねぇ」
そう呟いて、光一さんはコーヒーを一口啜った。
ミルクも砂糖も入れない、俺と同じブラック派の飲み方で。
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