ある意味運命的な恋

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「へいへい、心配しなくても、俺人にはあんまし興味ないから。確かに、お宅のルナちゃんには惚れてるけど」 ルナというのが、光一さんの愛犬、シェットランドシープドッグの名前だ。 一般的に略してシェルティと呼ばれ、牧羊犬ならではの賢さと長い被毛による気品さを併せ持つ、俺が最も好きな犬種だ。 特に、ルナの持つ気品と美しさと愛らしさといったらもう。 「ああ、今日連れて来るって言ってたぞ」 「マジで?ルナも来るのか。よっしゃ、楽しみだ」 「おいこら、うちの娘はどうでもいいのかこのガキ!」 「あんたが惚れんなって言ったんでしょうが」 光一さんにツッコミを入れ、母さんはタバコを灰皿に押し付ける。 「そういえば、私も会うのは初めてか。写真では何度も見せられたけど、確かに凄い美人だもんね~、小牧ちゃん」 思い出すように、母さんは言った。 確かに、言った。 『小牧ちゃん』と。 「え、えっと、その小牧ちゃんていうのが、光一さんの娘さんなのか?」 「ああそうだ。そういや、大吉と高校一緒だったな。もしかして知ってるのか?そりゃ知っててもおかしくないか、あんだけ美人だからな」 吉野光一。 吉野小牧。 吉野なんてよくある名前だから気にも留めていなかった。
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