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「大吉が、告られたぁ!?」
俺のコンプレックスの一つでもある、名前負け甚だしいファーストネームを高らかに教室中に響かせ、柿谷浩太は自称チャーミングポイントである束ねた前髪を揺らした。
案の定、そんな内容を大声で昼休みの教室にシャウトすれば、一斉にクラス中の視線が集まる。
「と、という夢を見たんだ!」
慌てて、俺は取り繕うように言葉を繋げた。
それを聞いて、「デカい声でくだらない話すんなよ」とでも言いたげに俺を睨み、クラスメイト達は各々の談笑を再開した。
クラス中の注目を浴びるとか、本当に勘弁して欲しい。どうせろくなことにはならないんだから。
「なーんだ、夢だったのか。焦ったー。そうだよな、大吉が女の子から告白なんてされるわけないよなー。この顔で」
この野郎のちょこんと上を向いて束ねられたプチパイナップルな前髪を見てると、無性に引っこ抜きたくなってくる。
やるなら多分、今がその時だろう。
「痛たたたた!なになに?何で俺のチャームポイント引っ張るの?」
家庭用染髪料特有のごわっとした手触りに眉をひそめつつ、俺はその金髪の頭をぐっと引き寄せ、今度はでかいリアクションをされないよう囁いた。
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