別の顔

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ジリジリと太陽が照り付ける。 大学のサークルの仲間達と テニスをした帰り。 「ねえ、最近出来たブラウっていうパン屋さん知ってる~?」 後輩の女のコの一人が諭くんの店の名前を不意に口にした。 「え~ 何処に出来たの?いつ?」 もう一人の後輩が 興味津々で聞く。 「女って なんでパン屋なんかが好きなのかなぁ」 同級生が 笑いながら 聞いている。 僕は ドキドキしながら 彼女達の話に聞き耳を立てた。 「それがね、お昼過ぎには パン売り切れちゃうから 閉まることが多いんだけど…。店長さんが すっごくイケメンで可愛いの!」 …ドキン… 胸が鳴る。 …可愛いって… 諭くんのことだよな… 「そうなんだぁ~ 今度 朝イチで行ってみる! 場所 教えて!」 僕は 頭の中が パニックになりそうだった。 なんで こんなに焦っているんだろう。 自分だけの秘密がみんなにバレたみたいな嫌な気持ち。 ジェラシー…ってやつか… 頭の隅っこに そんな言葉が浮かんできた。
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