別の顔

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なんでもないようなフリをしながら、駅の改札で皆と別れた。 暫く人混みに紛れるように時間を潰し、また改札を出る。 諭くんの好きな釣り場所は 学校から15分程歩いた海だった。 知らぬ間に 早足で歩く。 さっきシャワーに入ったのに、もう背中は 汗びっしょりだ。 この間とほぼ同じ場所に同じ背中を見つけた。 「諭くん!」 嬉しさのあまり 背中に大きな声をかけてしまう。 諭くんは 釣竿を持ったまま ゆっくりと振り返って 僕を見た。 「ああ、章くん」 …ほぉ…っと ため息をつきたくなった。 諭くんが、ただそこに居る。 それだけで 僕の気持ちは 安らいでいた。
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