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ほんの一瞬だった。
触れたか触れないか判らないくらいのキス。
それでも僕の心臓は飛び出るくらいにドキドキしていた。
そして諭くんも…
真っ赤な顔で 更に深く帽子を被る。
「諭くん…俺…」
「お、オイラはさ、別に章クンに同情で一緒にいて欲しい訳じゃなくて」
諭くんは 焦るように話し始めた。
「解ってるんだろ?章クン オイラの気持ち」
諭くんが顔を上げたので 僕は それを目を細めて見た。
「気持ちなんて 言葉にしなくちゃわかんないよ」
二人で見つめあう。
海風が二人の間に少しの距離を作る。
「好きだよ。諭くん」
僕は 真っ直ぐに諭くんを見た。
「友人以上の気持ちを持ってる。一哉に対する気持ちとは全然違うよ」
「章クン…」
諭くんは 釣竿をコンクリの上に バランと落とした。
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